Japanese
English
特集 核内イベントの時空間制御
Ⅴ.数理的アプローチ
数理的解析─転写の熱力学と情報処理
Thermodynamics and information theory of transcription in eukaryotic cells
井原 茂男
1,2,3
Ihara Sigeo
1,2,3
1東京大学先端科学技術研究センター
2東京大学大学院数理科学研究科
3東京大学生物医学と数学の融合拠点(iBMath)
キーワード:
非平衡系
,
RNAポリメラーゼII
,
転写ファクトリー
,
熱力学
,
情報量
,
エントロピー
Keyword:
非平衡系
,
RNAポリメラーゼII
,
転写ファクトリー
,
熱力学
,
情報量
,
エントロピー
pp.251-255
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200622
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生きていることは,熱的な非平衡状態を保つことである。では生命過程の基本プロセス,特に,転写における核内イベントなど,生体高分子の熱的状態,熱的揺らぎのなかでの情報処理とその制御はどのように行われているのであろうか?
Landauer1)やBennett2)らの“Information is Physical”という標語に要約されるように,情報処理の熱力学的な意味も明らかにされつつある。生命過程を初期に情報の観点から解析してきた人は,量子暗号や量子計算,人工知能の開拓者でもあった。最近流行りの人工知能,ニューラルネットワークの提唱者として著名なHopfieldは,1970年代に生体高分子の合成作用の物理過程について研究し3),その生命科学と物理の学際的で先駆的な寄与に対し,Diracメダルが贈られた。最近,確率過程と熱力学的な観点から,ポリメラーゼのキネティクスへのアプローチが注目されている4,5)。そこで本稿では,最近の真核生物の転写研究を踏まえ,既に本誌でご紹介した執筆者のこれまでの研究6,7)も俯瞰しつつ,確率過程の観点から転写の熱力学と情報処理を議論してみたい。
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