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1.はじめに
破骨細胞は通常骨組織にのみ存在し,石灰化した組織を破壊吸収する唯一の細胞である.したがって,骨吸収を亢進させるためには,破骨細胞の数を増加させるかまたは1つ当たりの破骨細胞の有する骨吸収活性を促進させるかのいずれかに頼ることになる.これまでわれわれは,破骨細胞の分化形成過程を解析するために,マウスの骨芽細胞あるいは間質細胞と血液細胞を用いた共存培養系を確立した.その結果,破骨細胞への分化には,骨芽細胞(間質細胞)との直接接触が必須であることが明らかとなった1,2).今から10年ほど前のことである.そして,この破骨細胞の分化過程は,活性型ビタミンD,PTHのような全身性ホルモンのほかに,骨芽細胞や血液細胞が産生するさまざまなサイトカインによって制御されていることが明らかとなった.そのようななか,雪印乳業生物科学研究所の創薬研究グループは,破骨細胞の分化の抑制を指標として,ヒト線維芽細胞株からTNFレセプターファミリーに属する新規サイトカインであるosteoclastogenesis inhibitoryfactor (OCIF)の同定に成功した3).また,OCIFの結合蛋白質のcDNAクローニングを行った結果,この分子は骨吸収促進因子によって骨芽細胞の細胞膜表面に発現誘導される破骨細胞分化因子(osteoclast differentiation factor;ODF)であることが明らかとなったものである4).ODFはTNFリガンドファミリーに属する膜貫通部分を有するサイトカインであり,われわれが想定した骨芽細胞の細胞膜に発現する破骨細胞形成を制御する蛋白質そのものが分子レベルで明らかとなった.また,ODFは破骨細胞の分化のみならず成熟破骨細胞の骨吸収機能にも関与していることが証明された.
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