最近の検査技術
簡易同定キットによる細菌の同定
吉崎 悦郎
1
,
坂崎 利一
2
1国立大阪病院臨床検査部
2国立予防衛生研究所
pp.240-244
発行日 1982年3月1日
Published Date 1982/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202461
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日和見感染が主体を占める現在の感染症では,患者の疾病と原因菌の種類とは無関係で,個々の患者の診断及び治療には原因菌の詳細な同定は不要である,臨床細菌検査室で菌種の同定を必要とするのは,(1)伝染病及び特殊な感染症 (2)菌血症,敗血症及び髄膜炎 (3)院内感染が疑われる場合とその疫学調査 (4)感染の再発が反復性のものか,再感染によるものかを診断する場合 (5)薬剤感受性に関するデータの収集で,特に(3),(4)については菌種をさらに生物型,血清型またはファージ型にまで細分する必要がある.
これらの同定には通常自製された試験管入鑑別培地が用いられてきたが,最近のような複雑化した細菌の分類学においては,同定に要するテストの種類は数限りなく,臨床細菌検査室で限られた経費と技術者の能力では,よほど特徴的な性状を持つ菌種でなければ分離菌を正確に同定することはできない.この点で,近年開発された数値同定法を導入し,それに必要な各種テストをキット化した"簡易同定キット"は,臨床細菌検査における菌種の同定をきわめて容易にし,かつ正確度を高めた.
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