増大特集 生命動態システム科学
Ⅰ.定量生物学
1.分子・細胞の計測
4)細胞機能計測
(4)メタボロミクス
平山 明由
1
,
曽我 朋義
1
Hirayama Akiyoshi
1
,
Soga Tomoyoshi
1
1慶應義塾大学 先端生命科学研究所
pp.408-409
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200013
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■メタボロミクスとは?
生体内には多種多様の代謝経路が存在し,代謝反応の結果として生じる代謝産物量も生体の環境応答や適応変化などによって変動する。これらの代謝物の総体をメタボロームと呼び,この変動を網羅的に追跡することによって生命現象を理解しようとする方法論がメタボロミクス(メタボローム解析)である。従来から特定の生体内代謝物の測定は行われていたが,1990年代にメタボロームやメタボロミクスの概念が提唱されはじめると,2000年代には質量分析装置の発達と相まって本格的なメタボロミクス研究の時代に突入した。これを裏付けるように,ここ数年国内外におけるメタボロミクスに関連する論文数は飛躍的に伸び続けている。
最新のHMDB(The Human Metabolome Database;http://www.hmdb.ca/)に登録されているヒトの体液(血液や尿など)から検出された代謝物の総数は11,173化合物であり,これは他のオミクス(遺伝子;約22,000,機能性RNA;約100,000,タンパク質;約1,000,000)と比較しても非常に少ない数である。したがって,他のオミクスよりも比較的総体を把握しやすいのではないかと考えられている。また,代謝物は生物種にかかわらず共通の化学組成を有することも大きな利点である。そのため,ゲノム情報のない動植物サンプルにおいてもメタボロミクスの手法を適用することが可能である。
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