増大特集 生命動態システム科学
Ⅰ.定量生物学
1.分子・細胞の計測
5)転写制御
(1)1細胞遺伝子発現解析
谷口 雄一
1
Taniguchi Yuichi
1
1理化学研究所 生命システム研究センター 一細胞遺伝子発現動態研究ユニット
pp.410-411
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200014
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■ゲノム解読の次なるターゲット
2003年にヒトゲノムが完全に解読された現在1),パーソナルゲノムの解読に向けたゲノム解読技術の高速化・低価格化に大きな注目が集められている。その一方でゲノム解析の次なるターゲットとして注目されているのが,より機能レベルの情報を直接取得するトランスクリプトーム(全mRNA)プロテオーム(タンパク質)の解析である。
DNAの発現産物であるトランスクリプトーム,プロテオームの解析は単純ではない。一つの理由として,ゲノムとは違い,トランスクリプトーム・プロテオームには“ノイズ”が存在することが挙げられる。つまり,ゲノムは細胞内に常に決まったコピー数が存在する(1倍体であれば1コピー,2倍体であれば2コピー)のに対し,mRNA・タンパク質のコピー数は,各細胞でそれぞれ乱雑に変動している。最近の研究からは,ノイズの働きによって様々な性質を持った細胞が生み出され,それらが様々な病理・生命現象において重要な役割を担うことを示唆する実験結果が示されている。こうした理由から,トランスクリプトーム・プロテオーム解析を1細胞レベルで行う技術,さらにはその動態や局在性を解析する技術の開発が,最近のゲノム科学における一つのトピックとなっている(図)。
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