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歴史上初めてレーザーの概念が示されたのは,1916年,アインシュタインの「量子論に基づく誘導放出の仮説」の発表による.レーザーは同一波長の光であるため屈折率が同様であり,エネルギーを特定の部位に集中させることができるので,様々な分野での応用が期待された.アインシュタインの概念に基づいて,1960年,メイマンが初めてルビーレーザーを開発して以後,多くの研究者が各種の物質から光を誘導放出させ,増幅する方法を開発し,様々な波長のレーザーが造りだされてきた.これらのレーザーは情報通信や様々な電子機器あるいは精密機械の開発に利用されているが,医療の分野においても,外科,眼科領域,歯科そして理学療法領域で利用されている.手術で利用されているレーザーメスや網膜剥離の治療に用いられる光凝固療法などでは熱反応をもたらす高出力レーザー(ホットレーザー)が使用され,歯科や理学療法領域で用いられる消炎・鎮痛を目的とする場合には熱反応のない低出力レーザー(コールドレーザー)が主に用いられる.レーザーの臨床応用は,1971年にMesterら1)が「レーザー光線の創傷治癒への影響」をAmerican Journal of Surgeryで発表するにおよび,特に創傷治癒としてのレーザーの使用が活発化してきた.以来,レーザーは生体活性化作用を有する「魔法の光」と目され,現代の様々な難病治療の救世主でもあるかのように臨床で用いられている.臨床応用と相まって,レーザーの生体への作用が疫学的・組織学的に研究され,レーザー療法の効果,適応,使用法が次第に明らかにされつつある.
レーザーの生理的効果についてはいまだに解明されていない部分も多々あるが,先達が明らかにしようと努力して得た成果に基づいて,理学療法士のかかわる病的状態に即して,レーザーの効果と使用法を供覧する.
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