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あとがき
藤田 道也
pp.286
発行日 2014年6月15日
Published Date 2014/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101624
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現在,日本の医学・生物科学の研究者たちは突如として襲ってきたつむじ風にさらされています。事の始めは理系女子を代表するかのような美人研究者による“ノーベル賞クラス”の研究発表でした。それは研究団体とメディアの合作と言っていいような演出であり,研究内容よりも発表者の身だしなみや立ち居振る舞いに好奇の目を誘導しました。しかし,瞬時にして彼女の論文のあら捜しが凱歌を上げ,メディアは一転賞賛から追及に乗り換えました。挙句は彼女の不正を調査する委員の論文までがあら捜しの対象になり,その波はついに本物のノーベル賞受賞者にまで押し寄せ,彼の目を白黒させました。
問題の本質は論文の作成方法にあると思います。一つは論文をわかりやすくするため,いわば読者へのサービスとして切り貼りすることがあり,それをでっち上げ,詐欺と呼ぶことは可能です。もう一つは研究の分担であり,分担研究者は地球の裏側のこともあります。相手を信頼するから協同研究者として認めるのであり,実験ノートを見せろと言うことは通常はないでしょう。分担研究者を増やす効果は大です。研究が短時間に仕上がるだけでなく,共著者が多い分引用回数も増えます。現在の業績主義にはもってこいなのです。
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