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あとがき
藤田 道也
pp.252
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101294
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30年前,細胞極性は形態学の分野の概念でした。その後,ナトリウムポンプの非対称分布の解明から始まって形質膜の分子的非対称性が常識化し,21世紀に入ると細胞極性の研究は細胞内部へ向かい,極性の生成・維持に関与するシグナル系・細胞骨格系とそれらの制御に関与するタンパク成分が研究の対象とされるようになってきました。さらに,分子細胞生物学分野の進歩として,形質膜の局所分化が起こる部位にはタンパク質合成のフルセットをもつアウトポストが形成される(さらにmRNAの定向性輸送が伴う)ことなどが確定されました。今後マイクロRNAの関与も明らかにされていくでしょう。
細胞極性に関する論文数はこの2,3年爆発的増加を示しています。それには上記の分子的解明が,細胞極性の形成・維持機構のくずれと細胞の腫瘍化の関係にがん研究者の目を向けさせることになってきたことが大きい寄与をしているように思われます。
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