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特集 器官の発生と再生の基礎
多能性幹細胞から臓器へ―Blastocyst Complementation法
Generation of functional organs from iPSCs by way of blastocyst complementation
村山 秀之
1
,
小林 俊寛
1
,
中内 啓光
1
Murayama Hideyuki
1
,
Kobayashi Toshihiro
1
,
Nakauchi Hiromitsu
1
1東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野
pp.191-196
発行日 2014年6月15日
Published Date 2014/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101607
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体細胞に数種の遺伝子を導入することにより,胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)と同等の多分化能と増殖能を持つ人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)が作製された1,2)。この革新的な技術は幹細胞の医学応用へ新たな扉を開こうとしている。iPS細胞は患者自身から樹立可能な多能性幹細胞であり,ES細胞の抱えている“受精卵の利用”と“拒絶反応”という問題を解決しうる。これにより自家移植医療の実現が理論上可能となり,夢の医療として期待されている。当初はレトロウイルスベクターによるゲノムへの挿入変異が危惧されたが,最近ではエピソーマルベクターや合成RNA,センダイウイルスベクターを用いた外来遺伝子のゲノムへの挿入を伴わない樹立方法が開発されている。さらにiPS細胞は患者から樹立可能なため再生医療の材料としてだけではなく,病態解明,新薬の創出,毒性試験など,多彩な利用を可能にする。このように患者自身のiPS細胞から目的の細胞を作り出し治療に用いるといった,まさに21世紀の医療を変革することが期待される。
一方,これら多くの研究が細胞を移植して治療する細胞治療を目的としているのに対し,移植可能な臓器を作り出すことも再生医療における究極的な目標の一つである。患者自身のiPS細胞から臓器が作り出せれば圧倒的なドナー不足に悩まされる移植医療の切り札となり,さらに移植後も免疫抑制剤の必要のない理想的な再生医療が実現できる。また,臓器を作り出す過程を解析することは臓器発生のメカニズムを知るうえでも意義が大きい。
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