Japanese
English
特集 RNA干渉の実現化に向けて
RNA干渉と肝疾患の治療
RNA interferences for the treatment of liver disease
梶野 一徳
1
,
樋野 興夫
1
Kazunori Kajino
1
,
Okio Hino
1
1順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座
pp.129-132
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101272
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肝癌研究とmiR-122
今日,肝疾患との関連が強く認められているmiR-122の前駆体RNAは,肝癌研究の歴史のなかで偶然発見された。B型肝炎ウイルス(HBV)とウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)は類似のゲノム構造を持ち,宿主肝に持続性感染を起こして肝細胞癌を発生させる。しかし,両ウイルスゲノムの宿主染色体への組み込みパターンは異なっている。ヒト肝癌におけるHBV DNAの組み込み部位は(少数の報告例を除き)ランダムで,宿主遺伝子の再構成にも一定の傾向を示さない。しかし,ウッドチャック肝癌においてWHVは高率にN-mycやc-myc遺伝子内あるいは近傍に組み込まれ,myc遺伝子の再構成を起こしている1)。1989年,パスツール研究所のグループはウッドチャック肝癌の1例から,c-myc遺伝子と融合しc-mycの発現レベルを50倍以上高める新規の細胞遺伝子hcrを単離・同定した2)。しかし彼らを困惑させたことに,hcrの転写産物は4.7kbと比較的長いにもかかわらず蛋白質をコードするフレームを含んでいなかった。そのため,当時はその転写産物の機能は理解されなかった。2002年,Tuschlらは肝臓で発現している新規miRNAとしてmiR-122を報告し3),それにより既報のhcr転写産物がmiR-122の一次前駆体であったことが明らかとなった。miR-122は肝臓に特異的かつ多量に発現しており4),後述するように,肝疾患と関連するmiRNAとして最も注目されているものの一つである。
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