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アレルギー疾患の発症に遺伝因子がかかわることは,古くから患者の家系調査の成績などによって示されてきたが,近年の科学技術の進歩に伴い,アレルギー疾患にかかわる遺伝子あるいはその多型が次々と明らかにされてきた1,2)。ほとんどすべての染色体に関連遺伝子がコードされているが,アトピー遺伝子として解析された染色体の例としては11q13,5q31.1などが挙げられる3,4)。11q13には高親和性IgE受容体FcεRIのβ鎖がコードされており,この領域における塩基の変異が英国人の一部のアトピー患者の発症にかかわる可能性が示唆されている5)。また,5q31.1にはIgE産生を促進するインターロイキン(interleukin:IL)-4遺伝子がIL-3,IL-5,IL-9,IL-13や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子遺伝子とともにクラスターを形成している4)。
アレルギー疾患患者ではTh1細胞とTh2細胞の機能的バランスがTh2細胞優位な状態に偏倚しており,Th2細胞が産生するサイトカインがIgE産生やアレルギー性炎症に重要な役割を演じると考えられている。アレルギー性炎症に関与するTh2サイトカイン,ケモカイン,それぞれの受容体,細胞応答の発現にかかわる細胞内シグナル伝達分子,核内因子などが明らかにされ,遺伝子多型についても解析が進められている。アレルギー性炎症にかかわる因子には,Th2サイトカインなどのように発現増大を介して関与する因子のみならず,機能低下を介してかかわる因子も存在する。フィラグリンは皮膚バリアの構築に重要な役割を演じるが,アトピー性皮膚炎患者の多くはフィラグリン遺伝子に変異を生じており,皮膚バリアの異常が皮膚炎発症に重要な役割を演じると考えられる6,7)。
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