特集 細胞核―構造と機能
5.染色体
ヘテロクロマチンとユークロマチン
広瀬 進
1
Susumu Hirose
1
1国立遺伝学研究所
pp.428-431
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101198
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定 義
分裂間期の細胞を塩基性色素で染色すると,クロマチンが凝縮していて濃く染色される領域と,クロマチンが弛緩していて淡く染色される領域が存在する。前者をヘテロクロマチン(heterochromatin),後者をユークロマチン(euchromatin)という。ある生物種のどの細胞でも凝縮している領域は構成的ヘテロクロマチン(constitutive heterochromatin)と呼ばれ,全ゲノムの10-20%を占め,主にセントロメア周辺にみられる。特に断らない限り,ヘテロクロマチンというと構成的ヘテロクロマチンを指す。これに対して一部の細胞種だけで凝縮している領域は条件的ヘテロクロマチン(facultative heterochromatin)と呼ばれ,胚細胞にはほとんど存在しないが,発生,分化の過程で細胞種ごとに特定の領域が凝縮してヘテロクロマチンとなる。例えば哺乳類の不活性X染色体があげられる。一部の例外を除いて,ヘテロクロマチンでは転写や組換えが不活性化されており,細胞周期のS期後期に複製される。逆に,ユークロマチンでは転写や組換えが活性か,活性化されうる状態にある。
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