特集 シナプスをめぐるシグナリング
8.プロスタグランジン
PGD2
魚住 尚紀
1
Naonori Uozumi
1
1慶應義塾大学 医学部 医化学教室
pp.478-479
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101055
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プロスタグランジン(PG)D2は,アラキドン酸より生合成される生理活性脂質の一つで,シクロオキシゲナーゼ(COX),PGD合成酵素がその過程を触媒する。哺乳類は進化的に別起源と考えられる2種類のPGD合成酵素を持つ。一つはヒト脳脊髄液中の主要タンパク質βトレースとして知られ,主として神経系に発現するリポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS),もう一つは血球系の細胞に多く発現し,グルタチオン転移酵素ファミリーに属する造血器型PGD合成酵素(H-PGDS)である。
PGD2は中枢神経系の主要PGであり,生理的には睡眠の誘発,痛覚反応の調節,体温の低下,黄体ホルモン分泌の抑制などの作用を示す。また,末梢においては血管拡張,気管支収縮,血小板凝集阻害の作用を持ち,PGD2はアレルギー,炎症のメディエータとしても機能する。DP1,DP2(CRTH2とも呼ばれる)の2種類のGタンパク質共役型受容体が知られ,これらを介して多彩なPGD2の生理作用が発揮されている。また,PGD2は非酵素的にJ2型シクロペンテノンPG類に変換される。15-deoxy-Δ12,14-PGJ2はDP2受容体と核内受容体PPARγに結合親和性を有する。15-deoxy-Δ12,14-PGJ2は抗炎症や,PPARγを介した脂肪細胞分化に関わることが知られている。
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