特集 シナプスをめぐるシグナリング
8.プロスタグランジン
ドパミン系と興奮性シナプス可塑性におけるプロスタグランジンE2とその受容体の役割
古屋敷 智之
1
,
成宮 周
1
Tomoyuki Furuyashiki
1
,
Shuh Narumiya
1
1京都大学大学院 医学研究科 神経・細胞薬理学分野
pp.474-477
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101054
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
プロスタグランジン(PG)E2は生理活性脂質の一種であり,炎症・免疫など多様な機能を持つ。PGE2はアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)とPGE合成酵素を介して生成され,EP1,EP2,EP3,EP4と呼ばれるG蛋白共役型受容体に結合して作用を発揮する1)。COXが非ステロイド系抗炎症薬の標的であること,PGE2の脳内投与が疾病時の発熱や内分泌応答を模倣することから,中枢神経系におけるPGE2の機能は主に疾病応答について解析されてきた。
近年EP受容体欠損マウスの解析から,心理ストレス下における衝動行動の抑制や麻薬であるコカインに対する応答性にEP1が関与することが示された1-4)。このEP1作用にはドパミン系の制御が関与していることが示唆されている。また,海馬依存的な記憶学習や,その細胞生物学的基盤とされるシナプス伝達効率の長期可塑性におけるEP2の関与も示されている5-10)。本総説では,これら生理的な中枢神経系機能におけるPGE2とその受容体の役割について最新の知見を紹介する。
Copyright © 2010, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.