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はじめに
医療の分野で血液型検査が必要となったのは,当初はもっぱら輸血の場合であり,輸血を安全に施行するための要求が血液型システムを発展させてきたドライバーと言える.1900年,オーストリアのLandsteinerは,ヒトの血清に他のヒトの赤血球を混合すると,凝集する場合と凝集しない場合があることに気づき,翌1901年,ヒト赤血球がA,B,Cの三つのグループに大別されることを発見し血液型学の扉を開けた.1902年,DecastelloとSturliが第4のグループを発見し,現在のA・B・AB・O型の基礎ができた.1907年にはOttenbergが輸血前検査として初めて交差適合試験を取り入れ,ABO血液型システムを臨床に応用している.その後,血液型は次々と報告されてきたが,これらの赤血球表面抗原は種々の糖蛋白質または糖脂質であり,極めて特異性の高い抗体によって認識されるエピトープは糖鎖あるいは蛋白質である.
国際輸血学会(International Society of Blood Transfusion;ISBT)の,赤血球表面抗原の用語に関する作業部会によると,ISBTの血液型の定義は,「特異的抗体によって免疫血清学的に実証される赤血球の細胞表面抗原」とされ,2008年8月の時点でISBTの血液型は300もの血液型抗原が同定されている.このうち260抗原は30種類の血液型システムのいずれかに分類され,残りは血清学的特性が似た二つ以上の抗原からなる集合(コレクション),または,高頻度(90%以上の頻度,901 Series)あるいは低頻度(1%未満の頻度,700 Series)で独立して遺伝継承される一連の抗原に分類されている.近年は血液型システムを規定する遺伝子の同定が試みられ,これまでにほとんどの血液型システムを決定する遺伝子が同定された.血液型抗原が糖鎖の場合(表1),その血液型を決定する遺伝子産物の機能は糖転移酵素である.血液型糖鎖抗原は,その糖転移酵素遺伝子のコーディング配列に存在する遺伝子多型に依存していることがわかってきた.
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