Japanese
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特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
糖鎖と統合失調症
Glycans and schizophrenia
佐藤 ちひろ
1
Chihiro Sato
1
1名古屋大学 生物機能開発利用研究センター
pp.160-166
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100979
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精神疾患とは,“ヒト”の高次脳機能を障害する疾患であり,“ヒト”における“脳”の研究が中心となる。しかし,そのような精神疾患を研究するにあたって,“ヒト”の“脳”という制約から,その疾患を生化学的に,生理学的に解剖することはつい最近まで容易でなかった。近年,ゲノム解析が容易かつ安価になってきたため,精神疾患の脆弱性遺伝子が次々と明らかになり,その遺伝子を基盤にした細胞や動物のモデルの作製が可能となり,精神疾患の研究が花開いた。精神疾患の場合,血液や体液以外に生体サンプルの入手が非常に困難なことから,他の分子と同様に糖鎖と精神疾患の関連性の検証はほとんど行われていなかった。しかしながら,最近の統合失調症の脆弱性遺伝子の報告の中に,糖鎖生合成に関わる遺伝子が報告され始めたこと,マウスにおける統合失調症様の診断基準が整い,遺伝子改変マウスの行動学的な解析が可能になり始めたことなどから,糖鎖と統合失調症の関連性の検証が行われる土壌が調ってきた。本稿では,糖鎖と統合失調症の関連性を示すこれまでの知見と,近年明らかになった知見をあわせて紹介する。
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