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[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ビククリン/GABAA受容体
中枢におけるGABA(ガンマーアミノ酪酸)は抑制性神経伝達物質として作用し,学習記憶機能とも深く関わっている。学習記憶の中心的役割を担っている海馬に,GABA神経は内側中隔野,対角帯から投射され,海馬神経の約10%をGABA神経が占めている。中枢のGABA受容体サブタイプには,GABAA受容体とGABAB受容体が存在する。
学習記憶の基礎過程であるシナプス可塑性を反映する長期増強現象(long-term potentiation:LTP)に関しては,海馬スライスを用いた多くの電気生理学的研究がなされてきた。GABA受容体サブタイプ別のLTPへの作用について,GABAB受容体の阻害に関しては,海馬の部位,テタヌス刺激の種類などによって様々である。一方,GABAA受容体の阻害に関しては,GABAA受容体阻害薬を海馬スライスの還流液中に投与しておくことでGABA神経の抑制機構の抑制によって,興奮性神経系シナプスでのLTPの増強を含めた明確な反応が得られやすくなることはよく知られている。近年,CA1領域における興奮性シナプスのLTPには抑制性シナプスの長期抑制現象が併発し,GABAA受容体を介する神経活動の抑制機構が重要な役割を果たしていること1),また,GABAA受容体欠損マウスでのLTPの増強傾向2),さらに,in vivoラット歯状回へのGABAA受容体阻害薬の局所的直接投与による持続的集合電位の増強3)などの報告がなされている。さらに,LTPと密接に関係する動物行動の実験系においては,GABAA受容体の阻害により老齢マウス,アルツハイマー病モデルマウスの記憶能力の向上,改善も報告されている。
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