特集 伝達物質と受容体
3.アミン
ドーパミン
ドパミン受容体の新しいアンタゴニスト
中村 史雄
1
,
五嶋 良郎
1
Fumio Nakamura
1
,
Yoshio Goto
1
1横浜市立大学医学部分子薬理神経生物学
pp.414-415
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100896
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すべての抗精神病薬はドパミンD2受容体の拮抗活性を持つ。第1世代(定型)抗精神病薬は大きくフェノチアジン系,ブチロフェノン系化合物に分類される。いずれも統合失調症の陽性症状である幻覚(幻聴),妄想には抑制作用を示すが,陰性症状である意欲低下や感情鈍麻などを改善する効果は乏しかった。また,錐体外路症状(アカシジア,ジストニア,パーキンソン病様運動障害),高プロラクチン血症,悪性症候群などの副作用が比較的多く,服薬コンプライアンスの低下などを招く問題があった。
一方,70年代より非定型抗精神病薬の原型となるクロザピンに陰性症状の改善効果があることが知られていた。クロザピンはドパミンD2受容体以外にもドパミンD4,セロトニン5HT2A,5HT2C,5HT6,アドレナリンα1,ムスカリンm1,ヒスタミンH1など多くの受容体の神経伝達に拮抗する。ここから複数受容体の拮抗作用(Multi-Acting Receptor Targeted Agent:MARTA)という概念が生まれてきた。しかし,クロザピンは無顆粒球症という重篤な副作用のため本邦での使用は認可されなかった。
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