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PAR(protease-activated receptor)は,特定のセリンプロテアーゼによって活性化されるG蛋白共役7回膜貫通型受容体であり,現在までにPAR-1,PAR-2,PAR-3,PAR-4の四つのファミリーメンバーがクローニングされている1)。これらのうち,PAR-1,PAR-3,PAR-4はトロンビンの受容体であるが,PAR-2はトロンビンでは全く活性化されず,トリプシン,肥満細胞トリプターゼ,血液凝固第Ⅶa,Ⅹa因子などによって活性化される。プロテアーゼによるPAR活性化の第1段階は,PAR分子の細胞外に露出しているアミノ末端側ペプチド鎖がプロテアーゼ(例えばPAR-1の場合はトロンビン)によって特定部位で切断されることで始まる。これによりマスクされていた受容体活性化配列(ヒトPAR-1の場合はSFLLR…)が,新しいアミノ末端ペプチドとして露出される。続いて,この新しいアミノ末端部分が同じ受容体の細胞外第2ループに結合することで受容体の活性化が起こり,細胞内シグナルが誘起される(図1)。
プロテアーゼによる特異的切断部位は,PAR-1ではArg41/Ser42,PAR-2ではArg36/Ser37,PAR-3ではLys38/Thr39,PAR-4ではArg47/Gly48である。PAR-1,PAR-2,PAR-4では,プロテアーゼによって露出される受容体活性化配列に基づくアミノ酸5-6個からなるペプチド(ヒトPAR-1ではSFLLR,PAR-2ではSLIGKV,PAR-4ではGYPGQV)を外来性に与えることによって,各受容体を非酵素的に活性化させることができる(図1)。このペプチド性リガンドのアミノ酸配列の変更あるいは誘導体化を行うことで,より効力が強く特異性の高いペプチド性アゴニストやペプチド性アンタゴニストが見出されている。PAR-1,PAR-4に関しては非ペプチド性のアンタゴニストも既に開発されている。一方,PAR-3は合成ペプチドでは活性化することができない。マウスのPAR-3はおそらく単独では機能を持たず,PAR-4のトロンビンに対する感受性を高めるためのco-factorとしてはたらくと現時点では理解されている1)。
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