特集 生命科学のNew Key Word
11.薬理/生理
PPARγ―脂肪細胞の分化を制御する核内レセプター
和田 孝一郎
1
,
上崎 善規
1
Koichiro Wada
1
,
Yoshinori Kamisaki
1
1大阪大学大学院歯学研究科薬理学
pp.522-523
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100633
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Peroxisome proliferator-activated receptors(PPARs)はステロイドレセプタースーパーファミリーに属する核内レセプターであり,ペルオキシソーム増殖薬に反応するレセプターとして見つかったためにこの名前が付けられた。現在までにα,β/δ,γの3種類が見つかっており,この内の一つがPPARγである1,2)。PPARγにはγ1,γ2,γ3の3種類のアイソフォームが存在しており,γ1とγ3はタンパクレベルでの発現形は同じであり,γ1/γ3はγ2よりアミノ酸残基で約30短い。PPARγには組織局在性が認められ,γ2は白色・褐色脂肪細胞に,γ3は脂肪細胞だけでなく大腸に発現している。一方,γ1は脂肪細胞,大腸や小腸といった消化管,さらに免疫系の細胞に高い発現が認められている3-5)。
PPARγはいわゆる核内レセプターであり,その内因性リガンドとしてはプロスタグランジンD2の代謝産物である15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)や長鎖脂肪酸などがあげられているが,これらの内因性リガンドはレセプターに対する結合力はそれほど高くない6)。これに対して合成のインスリン抵抗性改善薬(非インスリン依存性糖尿病治療薬)であるチアゾリジンジオン誘導体(ピオグリタゾン,ロジグリタゾン,トログリタゾン)は,非常に強力にPPARγと結合して活性化する7)。最近では非チアゾリジンジオン型のインスリン抵抗性改善薬も開発されている。現在まで,このチアゾリジンジオン誘導体以上の結合力をもつ内因性のリガンドは報告されていない。
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