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Toll-like receptor(以下TLR)は自然免疫系において,病原体認識を行う受容体の一群である。自然免疫系の受容体はパターン認識受容体とも呼ばれ,細菌やウイルスなどに共通する構造(pathogen associated molecular patterns;PAMPs)を認識することで自己と非自己を認識して免疫応答を開始する。また,組織障害や細胞死に伴って生じた自己由来の構造も自然免疫応答を開始することが知られ,damage associated molecular patterns(DAMPs)と総称されている。
TLRは細胞膜1回貫通型の膜タンパク質であり,細胞膜や細胞内のエンドゾームに発現する。現在ヒトでは10種類,マウスでは13種類のTLRファミリーが同定されている。このうち,核酸をリガンドとして認識するTLR3,TLR7,TLR8,TLR9,TLR13はエンドゾームに局在することが知られている。
TLRにリガンドが結合すると,TLRに共通する細胞内ドメインであるToll/IL-1 receptorドメイン(TIRドメイン)を介して細胞内シグナル伝達経路が活性化する。TLRのシグナル伝達の経路は,TIRドメインにリクルートされるアダプター分子の種類によってMyD88依存性の経路とTRIF依存性の経路に分けることができる。最終的にはNF-κBやAP-1,IRF3/7などの転写因子の活性化をもたらし,IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカイン,1型インターフェロンの産生を介して炎症反応が惹起される1)。
TLRは抗原提示細胞に多く発現し,病原体に対する免疫応答の初期に重要な役割を果たしている。
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