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セリンプロテアーゼの一種であるカリクレイン(kallikrein)は分子量,基質特異性,遺伝子構造などの点で血漿カリクレインと組織カリクレインに分けられる。血漿カリクレインは単一遺伝子によりコードされており,ヒトでは第4染色体q35上に位置する。カリクレインは肝臓で合成され,分子量115kDaのプレカリクレインとして存在するが,第XII因子により分子量約36と52kDaの2本鎖となり活性化される。血漿カリクレインは高分子キニノーゲンを分解し,9個のアミノ酸からなるブラジキニンを生産する。このように生産されたブラジキニンは血管透過性亢進,発痛,細動脈拡張,腸管や気管の平滑筋収縮に作用する。一方,組織カリクレインは低分子キニノーゲンをキニンに分解する酵素として研究されてきたが,1980年代から組織カリクレインと相同性のあるセリンプロテアーゼが次々と同定され,ヒトでは15種類の組織カリクレインが明らかとなった。これら相同的なセリンプロテアーゼはカリクレインファミリーと名付けられた。
15種類のカリクレインは遺伝子群を形成し,ヒトでは第19染色体q13.3からq13.4に局在している。このカリクレインファミリーに属する全ての酵素がキニノーゲン分解活性を持っているわけではなく,高いキニノーゲン分解活性を持つのはカリクレイン1(KLK1)だけであることから,多様な基質に対応していると考えられる。さらに,組織における発現部位も多様で,KLK1は膵臓,腎臓,唾液腺で,KLK2,3,4は前立腺で,KLK5は乳腺,脳,精巣で高く発現している(表1)。KLK3は前立腺特異的抗原(PSA)として知られており,前立腺癌の腫瘍マーカーとして利用されている。このように,カリクレインファミリーの基質特異性や発現部位の異なりが,カリクレインファミリーの多様な機能を生み出していると考えられる。以下に中枢神経系に発現するカリクレインファミリーについて,プロテアーゼの役割を述べる。
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