今月の臨床 不育症診療─その理論と実践
不育症とカリクレイン―キニン系
杉 俊隆
1
1東海大学医学部専門診療学系産婦人科
pp.1148-1151
発行日 2004年9月10日
Published Date 2004/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100604
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生殖におけるカリクレイン─キニン系
女性の生殖器系は,体内で2番目にキニノーゲンおよびその代謝産物の豊富な部位であるといわれている.ラットでは,各臓器のキニノーゲンの濃度は,血漿12.2 mg/ml,子宮10.9 mg/ml,肝臓0.4 mg/ml,腎臓1.2 mg/mlと報告されており1),生殖器の組織および血漿中のキニノーゲンの濃度は,排卵,妊娠,出産に伴って変動すると報告されている1, 2).
カリクレイン─キニン系は胎児,胎盤の血管に存在していることが最近明らかになってきている3, 4).胎盤の大きな血管や臍帯ではなく,絨毛の毛細血管内皮細胞にキニノーゲンやプレカリクレイン,カリクレインが存在することが報告されており5),キニンが胎盤の毛細血管に限局して産生されていることが示唆されている6).キニンは抗凝固,線溶促進作用だけでなく,血流を増加させるなどの生物学的活性を持ったペプチドであり,胎盤内で放出され,胎盤の血流や代謝産物の経胎盤輸送などを調節する重要な役割を担っている可能性が指摘されている.つまり,カリクレイン─キニン系は,全身の血液凝固,線溶系のみならず,特に生殖の領域で非常に重要な位置を占めていると考えられる.
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