特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
4.シグナル伝達系
ヒトの環境ストレスシグナル経路
有本 京子
1
,
斎藤 春雄
1
Kyoko Arimoto
1
,
Haruo Saito
1
1東京大学医科学研究所分子細胞情報分野
pp.418-419
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100540
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細胞は増殖因子やサイトカインなどの細胞間情報伝達物質のみならず,放射線,浸透圧変化,酸化剤などの物理化学的環境ストレスにも適切に応答して,増殖,分化,アポトーシスなどの適応反応を示す。ヒトなどの多細胞生物においては,細胞のストレス応答の目的は個々の細胞の生存のみにとどまらず,損傷の度合い次第ではアポトーシスによる細胞死を誘導し,個体の恒常性を維持することにある。
MAPキナーゼ(MAPK)経路は細胞外からの刺激を核へと的確に伝えるための主要なシステムの一つであり,主に遺伝子発現の制御によって様々な細胞応答を誘導する。酵母からヒトに到る広範囲の生物によく保存されているMAPKKK-MAPKK-MAPKの三種類のキナーゼから成っており,これらの引き起こす一連のリン酸化カスケード反応が細胞外からのシグナルを増幅しつつ核へと伝達する。
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