Japanese
English
特集 miRNA研究の最近の進歩
ヒト細胞におけるmiRNA経路と代謝
miRNA pathway and metabolism in human cells
平野 孝昌
1
,
塩見 美喜子
1
Takamasa Hirano
1
,
Mikiko C. Siomi
1
1慶應義塾大学 医学部 分子生物学教室
pp.302-307
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101001
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1993年,線虫において初めてmicroRNA(mi RNA)が発見された。その後,miRNA研究は次第に進み,例えば,miRNAは線虫に限られた抑制分子ではなく,植物や動物,さらにはある種の単細胞やウイルスまでもmiRNAを発現し,そのmiRNAが標的mRNAの発現(翻訳抑制および安定化)を制御する機能を有することがわかってきた1)。近年の次世代シーケンサーなどによる解析から,様々な生物種で数多くのmiRNA種が同定され,現在データベースには,マウスで590種,ヒトでは940種類のmiRNAが登録されている(miRBase ver. 15)。miRNAは21-23塩基長という特徴をもつが,これらmiRNAは全てArgonauteタンパク質と結合することによってmiRISC複合体(miRNA-induced silencing complex)を形成する2)。続いてmiRISCは,miRNAの配列依存的に標的mRNAに結合し,一般にそのmRNAの発現を阻害する3)。1種類のmiRNAを細胞に導入することにより,細胞内プロテオームは大きく変化するため,miRNAは複数種の遺伝子を標的とすると考えられる4)。miRNAの機能としてはこれまで,細胞周期制御やアポトーシス,細胞運命決定,さらにはがん化促進あるいはがん抑制が知られている5)。また,miRNAの生合成過程は,様々な因子によって複雑に制御されていることも近年明らかとなってきた。本稿では,miRNAの生合成および遺伝子抑制機構,またmiRNA生合成制御と分解過程に関して解説する。
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