増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
2.生化学検査
3 BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
島田 英実
1
1東ソー株式会社科学計測事業部営業部マーケティンググループ
pp.1122-1125
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101065
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はじめに
BNPはナトリウム利尿ぺプチドファミリーに属し,ANP(arterial natriuretic peptide,心房性ナトリウム利尿ペプチド)に続き1990年に松尾らのグループによりブタの脳より単離された.
そのためBNPと命名されたが,その後の検討によりANP同様心臓から分泌されるホルモンであることが明らかとなった.またANPが主として心房から分泌されるのに対しBNPは主に心室から分泌されることも明らかとなった.BNPはアミノ酸32個から成り,中央にリング構造をもつユニークな環状ペプチドである.同ファミリーに属するANP,CNP(C-type natriuretic peptide,C型ナトリウム利尿ペプチド)も同様の構造をもち,リング構造部分での相同性は高い(図1).
BNPの生理学的作用としてはANP同様,血管拡張作用,利尿作用,ナトリウム利尿作用,交感神経系およびレニン-アンジオテンシン系の抑制作用など心臓を保護し心不全の病態を改善する方向に働くといわれている.CNPは血管内皮細胞やマクロファージから分泌されANP,BNPのような心臓ホルモン的な作用は有さない.
BNPは心筋細胞において前駆体(preproBNP)の形で合成され酵素的切断を受けてproBNP(108アミノ酸残基)となり血中に活性型BNP(32アミノ酸残基)と不活性型のN末端BNPフラグメント(NT-proBNP)の形で放出される.代謝経路としてはナトリウム利尿ペプチドのクリアランス受容体を介する機序のほか,腎近位尿細管や血管内皮に存在するニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)による分解を受ける.
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