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脳は形態学的にいくつもの領域に分割でき,それぞれの領域は独自の機能を分担,保持している。トポロジカルに細分化された機能が協調し,情報を統合することで,脳は高次機能を発現することができる。したがって,形態的,機能的細分化と,ネットワークによる接続に基づく統合が高次脳機能の基盤となる。では,細分化の基礎となる脳の各領域はいかにして形成されるのだろうか。近年の研究成果から,脳の領域形成の重要な分子基盤の一つとして,外因性因子に対する神経上皮の応答性が挙げられる1)。本来,神経上皮は細胞自律的に固有の性質を持つわけでなく,オーガナイザーと呼ばれる領域からのシグナル(外因性因子)に刺激されて様々な形質を獲得する2)。シグナル自体の多様性や個々のシグナルの濃度など,多くの要因によって多様な神経細胞を生み出し,領域に独自の個性を持った分節構造を形作ると考えられる。神経発生学の目覚ましい進歩によりオーガナイザーの物質的な本体が同定され,その制御機構が徐々に明らかになった。
興味深いことに,オーガナイザーによる刺激を受ける以前に,すでに神経上皮ではパターニングのシグナルを受けるための遺伝的環境が準備されている。このような,パターニングを先導する事象に関する概念としてプレパターンが提案された。われわれは,このプレパターンの概念を分子レベルで理解することが脳の領域形成を解明することに必須であると考え,ショウジョウバエのプレパターン遺伝子IroquoisニワトリホモログであるIrx2を単離した。そして,小脳形成過程における分子機能に着目して解析することで,高等動物の脳の発生に,プレパターンの概念がどのように展開されるかを確かめた。
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