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はじめに
呼吸器疾患の病態形成は炎症性細胞や免疫担当細胞のみなず,肺の形態維持や生理学的機能を司る気道上皮細胞,気管支平滑筋細胞,線維芽細胞,血管内皮細胞,気管支分泌細胞などの細胞も病態形成に関与する.これらの細胞はサイトカイン,炎症性メディエーター,細胞外マトリックスなどの産生や接着分子発現を介して,また細胞自体がアポトーシスに陥り病態形成に関与するが,炎症性細胞や免疫担当細胞の機能発現を調節する細胞内シグナルの解析と比べ,その解析は十分に行われていない.細胞内シグナル伝達に機能する細胞内リン酸化蛋白は数多くあり,細胞外刺激,細胞,発現する機能および産生物質などの種類により機能するリン酸化蛋白が決定される.近年,mitogen-activated protein kinase(MAPK)superfamily,すなわち,extarcellular signal—regulated kinase(Erk),p38MAPK,c-Jun—NH2—terminal kinase(JNK)が同定され,それぞれの機能が次第に明らかにされている1,2).Erkは,細胞の増殖刺激により活性化され細胞増殖・分化に機能するキナーゼとしてよく知られているが,最近,サイトカイン発現・産生,化学伝達物質生成・遊離およびウイルス増殖,などに関与することが明らかにされつつある3,4).p38 MAPKとJNKは高浸透圧,紫外線,放射線,DNA傷害薬剤などの多彩な細胞外ストレスにより活性化され,細胞のアポトーシスを誘導するキナーゼとして同定された.これらの機能に加えて,p38MAPKはいくつかのisofromが同定され,それぞれの機能が明らかになりつつある.例えぼ,心筋細胞ではp38 MAPKαは肥大,p38MAPKβは細胞死を制御する成績が報告されている5).JNKは最近,サイトカイン発現・産生,化学伝達物質生成・遊離および細胞増殖を制御する機能が明らかにされている6,7).
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