特集 生物進化の分子マップ
8.ミトコンドリア
ミトコンドリア全ゲノムデータによる系統推定
西田 睦
1
,
宮 正樹
2
Mutsumi Nishida
1
,
Masaki Miya
2
1東京大学海洋研究所
2千葉県立中央博物館
pp.392-394
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100278
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進化の研究には比較が必須である。そして,まともな比較に不可欠なのが信頼性の高い系統枠である。つまり,生物界の系統構造の解明は,進化に関連するあらゆる研究・考察の前提である。しかし,この事実は意外にも明瞭に認識されていないことが多い。それはおそらく,比較をしようとする際に,既存の分類の枠組みを系統枠の代わりに利用できるからであろう。だが,これでは不十分である。幸い,近年の急速なDNA分析技術の発展は,全生物の系統関係をDNAデータから本格的に推定することが可能であるという希望をいだかせてくれる。しかしながら,著しい多様性をもつ生物界の精緻な系統枠を得ることは,必ずしも容易なことではない。その理由の一端は次項で述べるが,そんな中で筆者らは,ミトコンドリア全ゲノムデータを用いた分子系統解析によって,脊椎動物,とくにその根幹をなす魚類の高次系統枠を推定するプロジェクトを進めており,種々の成果が得られてきているので,ここではその概要を紹介することにしたい。
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