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ペリツェウス-メルツバッハ病Pelizaeus-Merz-bacher disease(PMD)とその対立遺伝子疾患である遺伝性痙性対麻痺タイプ2spastic paraplegia type2(SPG2)は,遺伝性中枢神経髄鞘形成不全疾患のプロトタイプとして最も研究の進んでいる疾患の一つである。PMDとSPG2は,ともに主要な中枢神経系のミエリン蛋白をコードするプロテオリピッドプロテイン1proteolipid protein 1(PLP1)遺伝子の異常で起こる。これまで点変異以外にゲノム重複と欠失がPMDとSPG2の原因変異として見出されており,さらに最近,第4の変異として位置効果も報告されている。これらの変異はそれぞれ異なる機序の病態メカニズムを介して疾患表現型を呈する。本稿では,PMDとSPG2の病態について,最近の知見をふまえてレビューする。
Friedrich Pelizaeusが最初のPMD家系を記載し,後にLudwig Merzbacherが大脳白質の著明な髄鞘の脱落を見出してから約100年を経るが,PMDの病態の解明は,1985年にPLP1の塩基配列と遺伝子座が明らかになってから急速に進展した。PMD/SPG2患者やマウス,ラットなどの動物モデルにPLP1遺伝子変異が次々に見出され1),その後病態研究が一気に加速した。まず第一点は,PMDの遺伝的な基盤が明らかになったことである。様々なPLP1遺伝子の変異が明らかにされ,これらの変異に起因する疾患が幅広い臨床像を呈すること2),特に臨床的に区別して考えられていたSPG2が同じPLP1遺伝子の変異が原因で起こる対立遺伝子疾患であることがわかった3)。第二点は,分子生物学的な技術を用いた正確な発症早期での遺伝子診断が可能になったことである。 さらに第三点は,PLP1の変異が中枢神経系の髄鞘形成不全を引き起こす病態機序が明らかにされたことである。
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