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中枢神経系は神経細胞,グリア細胞,血管などで構成されている。ヒトの大脳には約140億個の神経細胞が存在しているが,グリア細胞はそのほぼ10倍存在しているといわれている。教科書的には,神経細胞が脳の重要な機能を担う主役であり,グリア細胞は神経細胞の生存とその機能を支持している脇役とされている。しかしながら,近年さかんに研究されている中枢神経系の損傷や神経変性疾患の再生医学において,グリア細胞の重要性が注目されている。
グリア細胞の中で神経細胞と直接に接触しているのはオリゴデンドロサイトとアストロサイトである。オリゴデンドロサイトの突起は神経細胞の軸索にとりまき髄鞘を形成する。この髄鞘は神経線維の絶縁体としての役割と神経線維の跳躍伝導における役割の二つの意義を有する。一方,アストロサイトは血管と神経細胞の間に介在し,栄養やその他の物質を血管から神経細胞に,あるいは神経細胞の代謝産物を血管に輸送していると推測されている。髄鞘形成のメカニズムについては,神経細胞の軸索とオリゴデンドロサイトとの直接的な関わりあいを中心とした研究が今までに多くなされてきている。しかしながら,培養系において,オリゴデンドロサイトの突起が神経細胞の軸索に接着するためにはアストロサイトとの共培養が必要であることが報告されている1)。また,生体においても髄鞘化にアストロサイトが関与する可能性があることが報告されている2-4)。さらには化学脱髄後にアストロサイトを導入することによって髄鞘の再生が促進されたという報告もあり5),髄鞘形成にアストロサイトが重要な役割を担っている可能性が示唆される。
本稿では,大脳新皮質の正常発生過程において,アストロサイトが髄鞘形成前のオリゴデンドロサイトにどのような関わりを持っているのかについて,われわれのこれまでの研究成果を中心に概説する。
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