特集 ワクチンのよくある質問に答えます
【よく使用される成人のワクチン】
❹RSウイルス—大人でもRSウイルスワクチンを打つ必要はありますか?
浮島 翔
1
,
金澤 晶雄
2
1新島村国民健康保険本村診療所
2順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科、感染予防対策室
キーワード:
RSウイルス
,
ワクチン
,
呼吸器感染症
,
アウトブレイク
Keyword:
RSウイルス
,
ワクチン
,
呼吸器感染症
,
アウトブレイク
pp.40-41
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350010040
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◦RSウイルス感染の特徴
RS(respiratory syncytial)ウイルスはニューモウイルス科のRNAウイルスで、呼吸器感染症の原因となる代表的なウイルスの1つである注1。RSウイルス感染症は2歳までにほとんどの児が罹患し、以降も生涯にわたり感染を繰り返す1)。乳幼児期において非常に重要な病原体であり、特に生後数週〜数カ月の期間に初感染すると、20〜30%程度の患者に細気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患を引き起こす2)。
成人の場合は再発例がほとんどで、若年では上気道症状のみで軽快することが多いが、65歳以上では30〜40%で肺雑音が聴取され、10%程度で肺炎を起こすことがあり、特に入院が必要となった高齢者の死亡率は6〜8%と報告されている3)。免疫不全の背景がある成人では、58〜75%で胸部X線での浸潤影、17〜25%で胸水貯留を認め、また白血病で化学療法中の重度の骨髄抑制の患者で肺炎を発症した場合の致命率は63%に上ったという報告もある3)。そのほか、感染した児に接触した保護者や医療スタッフが、大量のウイルス曝露により症状が重くなることがある。さらに、長期介護施設における重症肺炎の流行や無菌病棟などでの血液腫瘍患者のアウトブレイクも報告されている。こうした背景から、ワクチンは公衆衛生の観点からも重要であると言える1,3)。
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