特集 輸血のすべて
Part 2 血液製剤の使用
9.その他の血液製剤—血漿に含まれるタンパク質が出血性・血栓性疾患の治療に用いられている
大森 司
1
Tsukasa OHMORI
1
1自治医科大学医学部生化学講座 病態生化学部門
pp.105-111
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120010105
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血漿は,血液を凝固しないように採取し細胞成分を除いた分画であり,凝固因子や抗凝固因子を含む。一方,血清は血液が凝固したあとの上清で,凝固因子を含まない。凝固因子や抗凝固因子の補充目的で血漿の投与が行われるが,その効率は決して良くない。例えば,成人で5L程度の循環血液が存在する場合,わずか10%凝固因子を上昇させる場合でも,500mLの血液が必要である。そこで,血漿から凝固因子や抗凝固因子を分離,濃縮して種々の疾患に対する治療に用いられてきた。一方で血漿中にはウイルスが存在し,実際に過去に非加熱濃縮凝固因子製剤の投与によって,多くの薬害HIV*1やHCV*2感染症が引き起こされた。現在ではウイルスの不活性化によって,濃縮製剤によるHIVや肝炎ウイルス感染のリスクはほぼなくなっている。さらに,安全性の高い遺伝子組換え凝固因子や抗凝固因子も利用可能になっている。
本稿では,血漿および遺伝子組換え凝固因子製剤,血友病に用いられる非凝固因子製剤および血栓性に対する抗凝固因子について解説する。
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