特集 大腸癌に対する腹腔鏡下手術のcontroversy
コメント:現時点で進行癌は適応となり得るか?
今 充
1
1弘前大学医学部第2外科
pp.31-32
発行日 1996年2月15日
Published Date 1996/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4425900004
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はじめに
腹腔鏡下胆嚢摘出術は,驚くほど短期間に開腹術によるそれを完全に凌駕してしまった.それに伴い,各種の消化器疾患に対し腹腔鏡下手術を積極的に行う施設がみられるようになってきた.それは,腹腔鏡下手術が通常の開腹術に比し低侵襲であり,術後疼痛も軽微で,早期の退院が可能であるなど,さまざまな利点がマイナス点より大きいからにほかならない.
大腸は,上行結腸と下行結腸は後腹膜に固定されているが,横行結腸,S状結腸(直腸S状結腸移行部,上部直腸を含む)は,腸間膜をもった紛れもない腹腔内臓器である.そこに腹腔鏡外科医の目が向かぬはずがない.また,大腸癌は消化器癌のうちではslow growingな比較的悪性度の低い癌として知られ,しかもm癌およびsm浅層の癌では,リンパ節転移が認められないことになっているので,その診断さえ術前に確実につけば,きわめて理論的な腹腔鏡下手術の適応であることに異論はないであろう.しかし,進行癌となればリンパ節郭清操作が伴うのは当然のことであり,この点において,腹腔鏡下手術の適応の可能性について大きな相違が生じるのは致し方のないことである.
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