連載 原著・過去の論文から学ぶ・21
WAGR症候群と小眼症マウスからPAX6/Pax6遺伝子の同定へ
大隅 典子
1
1日本学術振興会
pp.391-393
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960780040391
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Ⅰ.小眼症ラットとの出会い
筆者は大学院時代,顔面発生の研究室に所属していた。世界的に見ても同様のテーマを掲げる研究室は多くはなく,“ニッチ”な分野である。顔面形成において重要な役割を果たすのが,頭部の神経堤細胞。本誌の読者諸氏にとっては,末梢神経系の起源として馴染みがあるかもしれない。神経堤細胞は神経管形成の過程で神経上皮から離脱し,全身へ遊走するが,頭部の神経堤細胞は色素細胞や神経系細胞のみならず,顎や鼻の骨・軟骨へも分化し得る。
1990年頃,筆者が助手であった当時,いくつかの製薬会社から博士号取得を目指して研究室に所属する方々がいた。あるとき,山之内製薬(当時)安全性研究所の藤原道夫氏が「先生,顔面異常のあるラットが生まれたので見てください」と,出生直後に死亡した新生仔ラットの写真を持参した。横顔裂のようにも見えたが,よく見ると眼と鼻がまったく形成されていない。極めて興味深い材料になり得ると考え,藤原氏とともに解析を開始した。

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