連載 日本人が貢献した認知症研究の足跡・6
前頭側頭葉変性症とTDP-43
新井 哲明
1
1筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学
キーワード:
筋萎縮性側索硬化症
,
リン酸化
,
凝集体
,
プロテイノパチー
,
タウ
Keyword:
筋萎縮性側索硬化症
,
リン酸化
,
凝集体
,
プロテイノパチー
,
タウ
pp.1029-1031
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770091029
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はじめに
脳の前方部に変性の主座を有し,行動障害や言語障害を主症状とする疾患群を前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD),または前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)と称する。わが国では,認知症全体の1%,若年性認知症の9.4%を占める。臨床的には,行動障害型FTD,意味性認知症,進行性非流暢性失語の3型に分類される。病理学的には,これまで,主にピック病や皮質基底核変性症などのタウ陽性構造を伴うもの(tauopathy)と,ユビキチン陽性タウ陰性構造を伴うもの(FTLD with ubiquitinated inclusions:FTLD-U)に大別されていた1)。また,FTLD-U例の5〜10%は,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と同様の運動ニューロン障害を伴うことが知られていた2)。
ユビキチンは,細胞内で不要となった蛋白を認識して結合し,プロテアソームによる分解の指標となる分子である。多くの神経変性疾患において,ユビキチン化した蛋白が細胞内で凝集し,封入体を形成する。例えば,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)およびレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)に出現する封入体の主要構成成分であるタウおよびα-シヌクレインはユビキチン化されている。一方,FTLD-UおよびALSに出現するユビキチン陽性封入体の主要構成成分については長い間不明のままであった。

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