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教育講座
中枢性運動麻痺に対する実践的なニューロリハビリテーション—最新の知見と臨床応用への道筋
Practical Neurorehabilitation for Central Motor Paralysis
川上 途行
1
Michiyuki Kawakami
1
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
キーワード:
肩機能障害
,
神経筋電気刺激
,
運動錯覚
,
治療パイプライン
Keyword:
肩機能障害
,
神経筋電気刺激
,
運動錯覚
,
治療パイプライン
pp.859-864
発行日 2024年9月18日
Published Date 2024/9/18
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- Abstract 文献概要
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- 参考文献 Reference
はじめに
脳卒中は身体障害の主要な原因であり1, 2),脳卒中患者の約70%が上肢機能障害を主症状として経験している3, 4).この機能障害は,日常生活動作(ADL)5)や全体的な健康関連QOL6)に大きな影響を与える.さらに患者は,上肢機能を失うことが最も長期的な苦痛の1つであると報告している7).したがって,上肢機能の改善は,脳卒中生存者とその介護者の双方にとって重要な関心事となっている.
かつては,上肢機能障害に対するアプローチは困難と考えられ,能力低下への介入に治療者の主眼が置かれていたが,LTP(長期増強)とLTD(長期抑圧)に代表される,いわゆる「脳可塑性」に関する基礎的研究の知見が蓄積され8),これを基盤とした「ニューロリハビリテーション」の開発が,近年積極的に行われてきた.これにより,上肢運動麻痺に対する治療選択肢は増えてきているが,臨床現場への普及はまだ十分ではない.この理由の1つが各治療の適応範囲が不明確であることが考えられる.表1に脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)の上肢機能障害の項の推奨治療を示す.このように治療選択肢は増えているが,ガイドライン上にも各治療の対象(良い適応)となる麻痺の重症度については明記されていない治療手法もある.臨床家の実際の治療手法の選択については,個別の判断が迫られることが多く,それが実臨床での使用のハードルになっていると考えられる.
そこで,本稿では,上肢機能障害を近位機能,遠位機能に分けること,各治療が適応となる重症度に着目することで,臨床で用いやすい「実践的なニューロリハビリテーション」の情報をまとめていきたい.

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