巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
2.XR技術による身体性システムへのアプローチ─中枢神経損傷後の運動麻痺治療として─
金子 文成
1
1東京都立大学人間健康科学研究科理学療法科学域
キーワード:
extended reality/cross reality(XR)
,
embodiment(身体性)
,
中枢神経損傷
,
運動麻痺
,
運動錯覚
Keyword:
extended reality/cross reality(XR)
,
embodiment(身体性)
,
中枢神経損傷
,
運動麻痺
,
運動錯覚
pp.783-788
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034080783
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はじめに
仮想現実(virtual reality;VR)では,その文字が示すように,現実に起こり得ることはどのようなことでもプログラム化して仮想的に実現することができる.強調されるべきは,VRは単に物理的現実世界を仮想的に再現するのではなく,物理的現実世界では起こり得ないことを実現できる点にある.すなわち,VRでは物理的な現実世界で実現できない環境を体験することができ,その環境は客観的に他者と共有することが可能である 1).環境を人工的に制御することが可能である点は,医療応用にとって有利な点であるといえる.
さらに,理学療法(PT)において重要なのは,VRを体験する被験者が,自身の身体機能が拡張された状態を体験できることである.たとえば,中枢神経損傷後に麻痺した身体において,機能的な拡張を体験することは,Taub 2)のいう不使用の学習を予防し,逆に日常で麻痺した身体を使用するための動機付けとなる.
本稿では,近年実用化された,仮想的な身体機能の拡張技術といえる"運動錯覚療法"に焦点を絞り,VR関連技術をPTに活用する意義について概説する.

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