連載 ケアフルな一冊『文壇アイドル論』『妻の部屋』
齢を重ねるということ
坂田 三允
1
1群馬県立精神医療センター
pp.86
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900715
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『紅一点論』以来,斎藤美奈子に注目している。私よりも10歳も若いのだが,彼女のものの見方が好きだし,その表現の仕方(たとえば,村上春樹のところで述べられる「ペパーミント・ガム?カシミヤのセーター?ケッてな感じではありますが」というような)が好きなのである。本書は彼女のたぶん最も新しい評論集。といっても,「はじめに」で述べられているようにこれは作家論ではない。80年代から90年代にかけて「一時代を画した八人の表現者&言論人」たちを「スターダムにのし上げたジャーナリズムと,多くの読者」によって,「彼らがどのように語られ,評され,報じられたかを見ることで」,アイドルのアイドルたるゆえんを探ると同時に,彼らを生み出した時代について考察したものである。
「文壇アイドル論」で取り上げられているのは,村上春樹,俵万智,吉本ばなな,林真理子,上野千鶴子,立花隆,村上龍,田中康夫という面々である。上野千鶴子や立花隆がアイドルか?という気もしないではないが,彼らの著書がベストセラーになっていることはいうまでもない事実だ。
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