特集 これが薬を減らす道
コラム 「処方薬への依存」にどう対処するか
妹尾 栄一
1
1東京都精神医学総合研究所薬物依存研究部門
pp.47-49
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900510
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医療者は「処方薬依存」の危険性をアセスメントすべき
物質依存の研究領域のなかで,処方薬に対する依存・乱用に関しては,これまで正面から取り上げられることの少なかった問題である。乱用される処方薬としては,鎮痛剤や向精神薬などが列挙される。
依存・乱用される個々の薬剤を分析してみると,例えばベンゾジアゼピン系の睡眠薬を例にとれば,「都心の盛り場では睡眠薬が1錠数千円で取り引きされている」とか,「成田空港で精神安定剤が数百錠も押収された」などの報道に接すると,向精神薬に対する非合法な密売もまた,深刻な社会病理問題であることは間違いないであろう。しかし,その一方で,精神科医を含む医師によって処方された向精神薬に対する乱用や依存が生じていること,つまり臨床活動を基盤に生じている問題も明白な事実である.特に今日では,ベンゾジアゼピン系の範疇に属する抗不安薬や睡眠誘導剤などは,精神科に限らず一般開業医でも広く臨床に用いており,一部の患者で乱用や依存症の問題を惹起している。
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