連載 うちの病棟ちょっといい話③
毎日入浴―楽しみであるはずのことを楽しく
中井 昭仁
1
1新淡路病院
pp.59
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900056
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理想とされる在宅療養とはほど遠い環境のなか,当老人病棟では,限られた条件で患者さんに少しでも理想に近い環境を提供し,より穏やかに入院生活を送ってもらおうと,3年前から取り組みはじめた業務の1つに「毎日入浴」があります。
それまで,週3回の入浴日はまさに戦場で,スタッフは滝のように汗を流し,運搬・洗い・更衣と,自分の役割を黙々とこなすだけでした。そのあまりの勢いに「痛い」と大声で叫ぶ患者さん,「ワシは芋とちがう!」と怒鳴る患者さん。機械的な流れ作業のため個々の患者さんの能力は無視され,入院生活中数少ない楽しみであるはずの入浴が,屈辱的な苦痛な時間でしかなかったのです。
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