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はじめに
入浴,特に「湯船につかる」という行為は日本特有の文化であり,また趣味として各地の温泉を巡る日本人も多く,日本人にとって入浴は重要な生活活動の一部であると言えます.入浴動作の自立は,日常生活活動(ADL)の自立という側面だけでなく,生活の質(QOL)の維持につながります.一方で,入浴動作は最も介助を要しやすい動作とされており1),その要因として動作が多様かつ複雑で,また水で濡れた状態で動作を遂行する必要があることなどが考えられます.
入浴動作は,大きく分けて10項目の動作から構成されており(表1),各々の動作はさらに細分化されます.表1のように,入浴は洗体動作,浴槽の出入り動作,浴槽からの立ち上がり動作だけでなく移動動作や更衣動作も含んだ行為であり,動作自体が多岐にわたり難易度の高さがうかがえます.また洗体動作,浴槽の出入り動作,浴槽からの立ち上がり動作は,水で濡れた身体ならびに床面上で遂行する必要があり,滑りやすい環境でも対応できる身体機能や動作能力が求められます.さらに浴室は生活スペースから離れた場所に位置しやすく,家族などの目が届きにくいという難点があり,適切に安全性を確保しなければ実行性が下がります.今後,高齢化率の上昇に伴い,高齢期でストレスに対する脆弱性が亢進し,健康状態を崩しやすい状態であるフレイル(Frailty)2)を呈する者の割合が増加する可能性があります.入浴動作に介助を要する者の割合も増加することが予測されるため,入浴動作の獲得は重要な課題であると言えます.
そこで本稿では,入浴動作にかかわる諸動作のうち,移動動作と更衣動作の評価や介入方法は他稿に譲り,洗体動作,浴槽の出入り動作,浴槽からの立ち上がり動作に焦点を当て,身体機能,動作能力の側面からできる限り安全性を確保するための評価の視点・指標,また住宅改修を含む介入方法について解説します.
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