特集 「発達障害」は当事者に聞け! 新時代の「知」を切り開く人たち
—「発達界隈」を無視できない!—当事者自助グループが生み出す新たな「知」
横道 誠
1
1京都府立大学文学部
pp.20-22
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201227
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「発達界隈」当事者
現在の日本の発達障害者を理解する上で、「発達界隈」と呼ばれるコミュニティを無視することはできない。発達界隈とは、発達障害の当事者、家族、支援者などが使うSNS上のクラスターのことだが、その人間関係に現実世界での日常生活がひもづいている。当事者たちはSNS上に現れる情報を参考にしながら、発達障害者向けの自助グループ(当事者会はもちろん、家族会などもある)を探し、参加し、人間関係を広げていく。
発達界隈をバカにできない理由のひとつは、発信する当事者がしばしば専門家(精神科医、心理士・心理師など)でもある点で、彼らは当事者かつ専門家として、じつに鋭く深い言説を発信している。またそのような医療的・心理学的専門性を持たない当事者であっても、専門的言説を参照しつつ、じぶんの当事者性(自閉スペクトラム症者として、注意欠如多動症者として、あるいはASD/ADHD併発者としてなど)や個々の専門性(精神医学や心理学に関係しない学問分野、ITエンジニアリング、芸術活動などに関するもの)と掛けあわせて、発達障害の専門家たちの世界でも生まれていない新しい創案を続々と世に送り出している。
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