特集 精神科治療、この10年で覆った常識とは
“不要な神話”を手放した人たち
—誤用・悪用はないだろうか—境界性パーソナリティ障害治療の「制限設定」をめぐるジレンマを越えて
林 直樹
1
1西ヶ原病院
pp.35-38
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201084
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制限設定は機能しているか
制限設定(Limit setting)は、境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder、以下BPD)の治療における基本的原則の1つである。これまで治療を安全に進めるための「条件」として機能してきたのだが、現在に至って、それが治療を阻害する要因となることが認識されるようになっている。その問題は、制限設定が最初から抱えていたジレンマに由来しており、その後の展開の中で明らかになったものとして見ることができる。
そこで本稿では、制限設定の見方の変遷について考えることにしたい。それによって、BPD治療の現状における問題点が描き出されることになるだろう。まずは制限設定が語られるようになった背景から考えることにする。
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