エッセイ
放デイ、その〈劇的〉身体世界
中山 求仁子
pp.528-533
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200810
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さながら幻視のようなその風景に、なぜか強い既視感を覚えた。ひとり、木の下で延々とラジオの野球放送を再現する高校生。突然、玄関のドアを押し開き、庭先へと走り出す小学生。何度も何度も書棚の本を並べなおす男子中学生。切り刻んだ折り紙の海に囲まれながら、ハサミを放さない女子中学生……。彼らの身体は、そうせずにはおれない切実な自己を全面に押し出しながら、同時にどこか真空のような異次元の輝きを放っていた。
専門知識も経験もなかった私は、全身で彼らとかかわり続けた。
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