書評
日本統合失調症学会 監修 福田正人,糸川昌成,村井俊哉,笠井清登 編―統合失調症
大森 哲郎
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1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部精神医学分野
pp.179
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102661
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統合失調症学会が総力を結集して作成した全75章700ページを超える浩瀚な全書である。多士済々の執筆者が専門領域を記述する文章は平易明解で精彩に富んでいる。
全書的な教科書でありながら,いくつもの点で新しい。統合失調症はもはや遺伝的に発症不可避でもなければ,心理的に了解不能でもなく,病的過程が進行する疾患でもない。それは発達の過程で素因と環境が応答しつつ形成され,前駆期での介入が発症を阻止する可能性があり,未治療期間が短縮されれば病態の進行は抑えられ,初発エピソードをうまく乗り切れば安定期に至り,経過は治療介入と生活環境の影響を受けていかようにも可変的である,そのような疾患なのである。諸条件によっては未病に終始する可能性を考えれば,非疾患との境界は連続的ともなる。もはやかつての精神分裂病ではない。
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