特集 打つ手なしの行きづまり事例が、当事者研究で変化する
あらためて当事者研究とは。そして病院に導入し、実践するには。
向谷地 生良
1
1北海道医療大学看護福祉学部臨床福祉学科(精神保健福祉学講座)
pp.236-241
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200355
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1.「臨床の知」としての当事者研究
当事者研究は、統合失調症などをかかえた当事者たちの生活経験のなかから、生きる知恵を創出する自助活動として始まりました。それは当事者がかかえる苦労の体験を、「かけがえのない有用な人生経験」として受け止め、関心を寄せることから始まります。表面に現れている“現象”は、その人の“生きづらさ”の象徴であり、そこから「研究テーマ」が生まれます。そしてその研究は、出来事や経験の背景にある前向きな意味や可能性、パターンを見極め、仲間の経験も取り入れながら、ユニークな発想で、その人に合った自分の助け方や理解を創造していくプロセスとして、新たな出会いを生むのです。
2001年に北海道浦河の「浦河べてるの家」(以下、べてる)を中心とした当事者活動をベースに生まれた当事者研究ですが、今そこから生まれた「臨床の知」を、精神医療の現場に導入しようとする取り組みが始まっています★1。
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