特集 打つ手なしの行きづまり事例が、当事者研究で変化する
—実践報告5—ゆるくつながりつつ、安心して弱さを出せる器(場)が育った—鎧が解ける快感で、みんなが元気になってしまいました
三好 裕子
1
,
桑田 淳一
2
1聖和錦秀会阪本病院
2デイ・ナイト・ケアなかまの家
pp.228-235
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200354
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当事者研究に出会う前は元気がなかった
当事者研究といえば「べてるの家」ですが、私(三好)とべてるの家との出会いは2005年です。今思えばずいぶんと遅い出会いでした。当時、私は精神病圏の患者さんの薬物療法や個人精神療法にすっかり失望していました。長期化している患者さんたちはちっとも良くなられず、急性期の症状が治まった患者さんたちも、あまり元気じゃないことが多かったのです。私自身もあまり元気じゃなかったです。
そんな時に出会ったのが、斉藤道雄さんの本『悩む力』(みすず書房)と医学書院の『べてるの家の「非」援助論』でした。“三度の飯よりミーティング”のつながりの文化や、病気の苦労を大切にして弱さでもつながって生きていく場のありように「これだ!」といたく感激して、10冊ほど購入し、病棟や相談室、既存のデイケア、医局などに「すごいから読んでみて」と貸本して回りました。どんな賛同が得られるのかわくわくしていましたが、意に反して、当時のスタッフの反応はほぼ全員が「魅力は感じるけど、病院とは違う世界じゃないの?」「病院では無理なんじゃないの?」というもので、がっくりしました。本はその後も転々と貸本されているうちに畑の土と消えてゆきましたが、この時蒔いた種が当事者研究を始める第一歩だったのかなと思っています。
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