特集 「処方薬依存」と「脱法ドラッグ」が大変なことになっておる
処方薬依存―何がこんな残念な状況を生んでいるのか直視してみましょう
松本 俊彦
1,2
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室
2独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター・精神科
pp.12-18
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101254
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ベンゾジアゼピンに寛容すぎる日本
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬(本稿では、「向精神薬」という用語で統一させていただきます)は、今日、あらゆる診療科で広く処方されています。当初、その特徴は、かつて抗不安薬として用いられたメプロバメートや、睡眠薬として用いられたバルビツレート系やブロムワレリル尿素系の薬剤に比べて、依存性、ならびに大量摂取時の危険性が低い、という点にあるとされてきました。
しかし海外では、1970年代には早くもジアゼパムの乱用・依存が問題化し、その危険性が指摘されるようになりました。そして欧米に比べると、わが国の治療文化は不自然なほどベンゾジアゼピンに寛容でしたが、そのことが次第にさまざまな弊害を生み出してきました。その1つが、1996年以降、確実に増加してきた向精神薬依存症、つまり処方薬によって身体的・精神的依存が形成されてしまう問題です。いまや向精神薬は、覚せい剤に次ぐ、わが国を代表する乱用薬物となっています(図1)。そしてもう1つが、過量服薬による自傷・自殺の問題です。
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