連載 戦前、精神障害者の治療を担っていた民間施設とは・3
富士山中にあった民間療法施設「不二大和同園」
澤田 恵子
1
1静岡県立東部看護専門学校
pp.92-96
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100717
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山の中の民間療法施設
不二大和同園は、現・静岡県富士市の富士山の麓にあった。JR富士駅から車で40分、東名富士ICから30分のところである。富士山といえば、一時オウム真理教の施設があったことでイメージが悪くなったが、日蓮宗総本山大石寺もあり、古来から富士山信仰と宗教が結びついてきた場所である。不二大和同園は、創設が昭和に入ってからと比較的新しい。行われていた療法は神社・仏閣に関連した内容ではなかった。
精神障害者の民間療法施設は、呉秀三・樫田五郎の「精神病者私宅監置ノ状況及ビ其統計的観察」で報告され、高尾山をはじめ、その様子はある程度明らかにされている。静岡県では、龍爪山の中腹にあった穂積神社が報告されている。穂積神社は現存する。一時期のような繁栄は見られないが、標高1000mの龍爪山をハイキングする人々の休憩所になっている。しかし、龍爪山の登山道や穂積神社の案内板には、かつてここに精神障害者が民間療法を受けるために集まっていたことは全く記載されておらず、著者自身も歴史を学習するまでは全く知らなかった。それでも、かつて施設があったことを知ると、神社のある場所は、狭いながらも平地があり、収容する場所があったと想像することはできる。
今回紹介する不二大和同園は、非常に大きな施設であったにもかかわらず、山中であるため、現在の様子からは、広大な民間療法施設があったことは想像すらできない。
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